人気ブログランキング |

メタルビーズ教室は8月までお休みです。教室の皆様とは秋にはお目にかかれますように。インスタグラムやってます。metalbeadsroom 下の青いアイコンをタップしてください
by mareemonte
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30





インスタグラム
mareemonte3

メタルビーズ教室

・横浜教室
平日行っております。
ご希望の方は
hayatayuko@gmail.com
へご連絡頂ければと思います。
詳細をご連絡致します。

メタルビーズ教室は分教室は一切ございません。





ご質問等は
mareemonte@excite.
co.jpまで。内容によってお答え出来ないこともありますのでご了承下さい



【ウーマンエキサイト】ゴールドブロガーに選んで頂きました。



・メディア


2008年 STORY


2009年 女性自身


2010年 VERY

カテゴリ
全体
メタルビーズ教室について
メタルビーズ
お弁当
重箱
劇やら映画やら
本と料理

韓国 
村上信夫
京都
マレーシア
イギリス
ダニエルウエリントン
上海
香港
中華街
季節行事
パン
茶・コーヒー
台所
レシピ
和食
アウトドア
おやつ
美味な店

パーティー
コスメ

マレビーズ
中国
きれい
朝ごはん
台湾
散歩
東北
国内旅行
2020日記
自粛生活
stay home
韓国料理
おうちごはん
未分類
以前の記事
2020年 06月
2020年 05月
2020年 03月
more...
タグ
(368)
(287)
(160)
(84)
(76)
(59)
(53)
(52)
(50)
(45)
(45)
(44)
(39)
(39)
(32)
(28)
(26)
(25)
(23)
(23)
検索
ブログパーツ
  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。
記事ランキング
画像一覧
天星小輪・6
天星小輪・6_b0048834_229785.jpg












香港の中でも香格里拉酒店(シャングリラホテル)系列はシングルルームの床面積が広く出来ている。九龍香格里拉酒店(カオルーンシャングリラホテル)を好んで使っていたが、1991年に金鐘に港島香格里拉酒店(アイランドシャングリラホテル)が出来てからはこちらが定宿となった。アイランドは床面積の広さに加え、天井が高く、絨毯の毛足は長くふかふかで、家具の色はマホガニー色で統一されており、心地よかった。しかも広くゴージャスな机は夜中にコツコツと資料を作成していても寂しい気分になりにくく、何よりそこが気に入っていた。ただ、あまりにも豪華で、違った空気が吸いたくなってしまうことも事実だった。私は朝一番で地下鉄に乗り、金鐘から中環へ、そこから天星小輪に乗って九龍側へ向かう。別に何をするわけでもない。ただ天星小輪に乗って海に浮かぶ。豪華で金の匂いが充満した空間も好きだが、それだけでは何かが足りない。その何かは香港の場合、きっと猥雑とした下町の匂いなのだ。この空間に浸るだけで私は気持ちが落ち着いた。


中環の日曜の朝だけはある種独特の空気が流れていた。マンダリンオリエンタル香港ホテルの隣の公園を中心として中環の駅前から天星小輪の乗り場までみっしりと白い集団が屯している。それは仕事が休みのフィリピンメイド達で、それぞれが同郷の人間であるとか、仲のいい者で集まって喋ったり小さなラジカセでフィリピンの歌を聞いたりしている。初めはその光景が異様に見えて船着き場までの道を非常に緊張して走り抜けていたのだが、慣れてくるとその風景も香港の日曜の一こまと受け止められるようになった。





私はいつもの朝のように天星小輪に乗りに行った。
船の乗り場で運賃を払う。日本円で100円もしない。一等料金と二等料金があり、私は必ず二等に乗っていた。いつもなら中環から九龍へ行ったらネイザンロードをぶらつくのだが、その日は時間がなくて九龍からすぐに中環へ折り返した。


船は出発する。晴れていて波が大きく揺れることはない。いつも通りの静かな海だ。
ぼおっと海を眺めていると後ろから女性の歌声が聞こえてくる。
一人?いや、二人で歌っているようだ。きれいな声。
楽しくて歌ってしまった旅行者かな、とちらりと後ろを振り返る。





あ。





「こんにちは。」



歌声の主はマダムの所にいたフィリピン人メイドの二人だった。
声をかけた私が誰なのかよく分からないようだ。
私がマダムの名前を出したらメイドも私を思い出し、挨拶を返す。


「こんにちは。」
「歌、お上手ですね。」

ふふふ、と二人のメイドは顔を見合わせて恥ずかしそうに笑う。

「今日はお休みですか?」
「そうです。日曜だから。」

メイド達は休みの日でもメイドウェアのままだ。二人ともコックコートのようなしっかりとした白の生地でチャイナカラーに仕立ててある上着で黒いスラックスを履いている。一人の胸にはロケットペンダントがさがっている。


「あの時はつばめの巣を有難うございました。とてもおいしかったです。」
「あれは私達が御馳走したのではなく、マダムです。」
「でもお二人が作ったのでしょう?」
「作り方はマダムに習ったものですから。」




会話も続かなかったので軽く会釈をしてまた海を眺めた。
中環の風景が近付く。7分間の海の旅はもうすぐ終わる。

私は感じ良く社交辞令を口にする。
「お会い出来てよかったです。マダムにもよろしくお伝えください。」
「マダムは死にました。」









「え?」






中環の風景が近付いてくる。



「あの、マダムが死んだって今、言いましたか?」
「はい。言いました。」
「なんで?」
「さあ。詳しくは知りません。私達はメイドですから。」



船が船着き場につく。船が岸につく衝撃。錨がおろされている。


「あの、でも、いったいどういうこと?」
私は気持ちが動転していた。


「突然倒れたみたいです。それ以上は知りません。」
「そうなんですか。」



船から船着き場へステップがかけられる。人がどんどん降りて行く。



「あの、今はマダムの所に?」
「いいえ。違います。違う所で働いています。」
「そうですか。」


メイドの胸にかかっているロケットペンダントに小さな子供の写真が入っていたのに私は気が付いた。


「あなたのお子さん?」
「いいえ。私の一番下の妹です。年が随分離れているからとても可愛くて。給料が上がったから仕送りも増やせたんですよ。」
メイドの顔は少し誇らしそうに見えた。妹が可愛くて仕方なさそうだった。

「よかったですね。」
「ありがとうございます。」



さっきまでのざわめきはすっかり消えた。
船を最後に降りたのは私達だった。




「さよなら。」




メイド達はフィリピン人達の中へ消えていった。
そしてもう会うことはなかった。
タグ:
by mareemonte | 2007-02-19 00:27 | | Trackback
トラックバックURL : https://mareemonte.exblog.jp/tb/6332093
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
<< 春節 天星小輪・5 >>