人気ブログランキング |

メタルビーズ教室は8月までお休みです。教室の皆様とは秋にはお目にかかれますように。インスタグラムやってます。metalbeadsroom 下の青いアイコンをタップしてください
by mareemonte
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30





インスタグラム
mareemonte3

メタルビーズ教室

・横浜教室
平日行っております。
ご希望の方は
hayatayuko@gmail.com
へご連絡頂ければと思います。
詳細をご連絡致します。

メタルビーズ教室は分教室は一切ございません。





ご質問等は
mareemonte@excite.
co.jpまで。内容によってお答え出来ないこともありますのでご了承下さい



【ウーマンエキサイト】ゴールドブロガーに選んで頂きました。



・メディア


2008年 STORY


2009年 女性自身


2010年 VERY

カテゴリ
全体
メタルビーズ教室について
メタルビーズ
お弁当
重箱
劇やら映画やら
本と料理

韓国 
村上信夫
京都
マレーシア
イギリス
ダニエルウエリントン
上海
香港
中華街
季節行事
パン
茶・コーヒー
台所
レシピ
和食
アウトドア
おやつ
美味な店

パーティー
コスメ

マレビーズ
中国
きれい
朝ごはん
台湾
散歩
東北
国内旅行
2020日記
自粛生活
stay home
韓国料理
おうちごはん
福岡
未分類
以前の記事
2020年 06月
2020年 05月
2020年 03月
more...
タグ
(368)
(290)
(160)
(84)
(77)
(59)
(53)
(52)
(50)
(46)
(45)
(45)
(39)
(39)
(32)
(28)
(26)
(25)
(23)
(23)
検索
ブログパーツ
  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。
記事ランキング
画像一覧
新宿・2
新宿・2_b0048834_13593511.jpg










「ごめんなさい。」

かろうじて謝ったが、その声は聞こえただろうか。小さな声しか出なかった。
足早にピンクのカーテンの向こうから立ち去り、コンビニのドアを押し開け、金魚ちゃんの店に続くエレベーターの前にたどり着く。さっきの、私の事をすごい目で睨んだ男のカップルが追っかけてくるんじゃないか。殴られるんじゃないか。早くエレベーター、来て。早く。早く。私の心臓は早鐘のように打ち響いていた。






「あらあ、早かったわねー」
店のドアを開けると緑のTシャツにジーンズ、スニーカーの金魚ちゃんがカウンターに座りながら帳簿を見ていた。血相変えて店に飛び込んできた私を見て
「ちょっとおー、何事なのおー?」
と優雅な調子でグラスを出し、そこにウーロン茶を注いでくれた。

「今ね、下のコンビニでトイレを借りようと思ったのね。私、ピンクのカーテンの向こうがトイレだと思ったのね。そしたら違ったの。で、そこにいるカップルにすごい顔で睨まれてちゃって、でも足がうまく動かなかったから、カップルがこっちに向かってきたのね。で、力をふりしぼって謝ったんだけどね、小さな声しか出なくって、それでまた怒らせちゃったかもしれないの。追っかけてこられるかと思って、もう、こわくてこわくて」
涙ぐみながら一気に話を捲し立てる私を金魚ちゃんは呆れて見ていた。

「優子。あんた、二丁目のこと、何も分かってないのね。」
「うん。分からないよ。」
「よくそれでうちの店、来てたわねー。」
「私は二丁目に興味があるんじゃなくて、金魚ちゃんの店が好きなだけだもん。」
「あら。嬉しいこと言うわね。駄目よ、私に惚れちゃ。」
「惚れないので、平気です。」


金魚ちゃんの顔を見てほっとして、ウーロン茶を飲んで少し落ち着いた私は軽口がたたけるようになっていた。


「普通はさ。向こう側に渡ってはいけない扉って、なんとなく分かったりするじゃない。ああ、あそこは私の入ってはいけない扉だって。でも下のコンビニのカーテンにはそのオーラがなかったんだよね。あまりにも普通にカーテンが下がっていて。あれじゃあ、分からないで入る女の人だっていると思う。」
「アタシたちには分かるんだけどね、ゲイの扉は。」
「そういうもの?」
「そういうもの。」

金魚ちゃんは細い煙草をケースから取り出して火をつける。その手は男の太い指なのだが、仕草は流れるようで、しなりがあり、情感をたたえていた。


「優子、じゃ、疲れたわね。」
「うん、疲れた。」
「じゃ、肉ね。」
「肉?」
「そうよ、ランチ。肉よ。」












歌舞伎町の怪しい雰囲気の中で周りから浮きあがっている店がある。名は車屋。本店の入り口の御所車には華々しく生花が活けてあり、店内には岡本太郎の本物の絵が飾ってある。その店の別館がバーニーズニューヨークの斜め向かいにあり、この店の1階では鉄板焼を食べさせてくれるのだ。別館の鉄板焼きは昼は手頃な値段設定でおいしいランチをやっている。平日はサラリーマンあり、おばちゃんあり、親子連れあり、昼間にスタジオアルタで収録をしているテレビ番組の出演者あり、一括りに「こんな人達が多いです」とは呼べない混沌とした客層で、面白かった。






真っ白いコックコートに高い帽子のシェフが目の前にやってきて肉を焼きはじめた。綺麗にサシの入ったピンク色の肉はあっという間に焼き色をつけ、おいしそうな匂いが立ちのぼった。シェフは焼けた肉をよく切れそうなナイフとミートフォークで器用に肉を切りさばく。シェフの動きには無駄なく美しかった。


「アタシ、目の前で肉を焼いてもらうのって、好き。」
「うん。私も。楽しいよね。」
「疲れてる時は肉に限るわ。野菜なんて食べてちゃ駄目。肉よ、肉。」
「そういうもの?」
「そういうもの。」
金魚ちゃんは肉が好きだ。疲れているから、と言って肉を食べ、楽しいから、と言っては肉を食べる。魚を食べている所を見たことがなかった。





「実家に帰るのよ。」
「どうして、急に?」
「この商売、親に内緒だったんだけどね。バレたの。」
「なんで?」
「さあ。どうしてだろうね。」
「内緒事ってなかなか全う出来ないものなのかな。」
「そうね。そんなものなのかも。それにね。親が老けてきちゃってね。そろそろ近くにいないといけないのかなって。アタシさ、長男なの。」
「そうなんだ。」
「優子はまだ若いから分からないかもしれないけど、親が老けてくるって、寂しいもんなのよ。いろいろ考えるしね。」
「戻ったら、どうするの?」
「まだ考えてないけどね。」
「金魚ちゃんが先の見通しを立てないで行動するなんて、信じられない。」
「そう?」
「そうだよ。金魚ちゃんは将棋だったら、8手先くらいまで読んでいるような人だと思っていた。」
「それは、買いかぶりすぎだなあ。アタシ、あなたが思ってるほどちゃんとしてないのよ。結構いきあたりばったりだったからさ。今まで。」
by mareemonte | 2007-04-08 14:06 |
<< 新宿・3 新宿・1 >>